いさ 進一。 伊佐進一

[B! politics] 検察庁法改正案はクロかシロか

いさ 進一

検察庁法案改正が、ネット上やメディアで大きく取り上げられています。 「政権に忖度する検察官を、定年制度をゆがめてまで検事総長にしようとしている。 」「三権分立の破壊だ。 」 これに対し、私の方にも「公明党は、一体どう考えているのか」とのお問い合わせも頂いております。 党を代表する立場にありませんが、政権与党の一員として感じていることをまとめてみました。 私の正直な感想は、 事の本質はともかく、何か危ないことをしようとしているという「イメージ」だけがネットで拡散しているということ、 でもこうなった原因は私たち政権与党にも少なからずあるということです。 その理由について、枝葉末節はそぎ落として、できるだけシンプルに書きたいと思います。 1.法案で何をしようとしているか まず、そもそも今回の法案で何をしようとしているか。 それは、 国家公務員の「定年の延長」です。 民間でも、定年が65歳まで、あるいは70歳までと延長できるようになってきていますが、国家公務員は「60歳」が定年(省庁のトップである事務次官は62歳)です。 今回の法律で、民間並みにこの定年を伸ばし、国家公務員も「65歳定年」にしようというのが、今回の法律です。 しかし、検察官には「国家公務員法」ではなく、「検察庁法」という別の法律があります。 これは、戦前には検察が裁判所に付置されていたことに由来しており、戦後の昭和22年の「検察庁法」が制定されて、ようやく現在の形となりました。 この「検察庁法」によって、検察官の定年を「63歳」(検事総長は65歳)と定めています。 それからはるか後、昭和56年に、国家公務員の定年が定められるわけですが、その際に検察官の定年の根拠は「検察庁法」のままでした。 今回の法律では、検察官も他の国家公務員も定年を「65歳」としてあわせることになりますが、そのためには「国家公務員法」、「検察庁法」の両方を改正する必要があります。 この法改正の内容は、急に出てきた話ではありません。 2年近く前の平成30年8月、人事院の「意見の申出」で示された方針でした。 黒川氏の定年が話題にのぼる、はるか前からの議論でした。 2.三権分立 「時に総理をも逮捕できる検察を、自由に任命できるようにするのはけしからん!」「三権分立の破壊行為だ!」とのご意見があります。 わたしは、この意見には違和感があります。 なぜなら、 もともと検事総長の任命権は「内閣」にあるからです。 ましてや、「三権分立」と結びつけるのは、ちょっと無理のある議論だと思います。 あらためて申し上げるまでもなく、 検察は「行政機関」です。 司法でも立法でもなく、行政組織です。 よって、 検事長以上の任命を「内閣」が、それ以外の検察官を法務大臣が行うのは、もともと法律に定められたことです。 ちなみに、「三権分立」をしているはずの「司法」ですら、最高裁長官を指名するのは「内閣」で、最高裁判事も「内閣」が任命します。 なぜかといえば、「三権分立」の趣旨は、「司法」「行政」「立法」がお互いに関与して、チェック・アンド・バランスを効かせるところにあります。 あえて言えば、「司法」に対してすら「内閣」は人事に関与しています。 ましてや、 行政機関たる検察の人事に対して、「内閣」が人事を行うのに、大きな問題があるとは思えません。 なら、「検察官の公正性はどうやって確保しているんだ」、との疑問があるかもしれません。 というのは、検察官は一般の行政機関とは異なります。 それは 総理をも逮捕できるという唯一の公訴提起機関という点であって、その職務には公正さが求められます。 検察が準司法的性格を持つと言われる理由です。 だからこそ、一般の行政官にはない身分保障があります。 検察官の身分保障とは、本人の意思に反して「解任されない」ということです。 検察庁法第25条に「前三条の場合(定年や体調不良)を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない」とあります。 つまり、時の権力者を公訴した、あるいは公訴しようとしても、それを理由にクビにされることは決してありません。 検察の公正さとは、「任命」のところではなく、「解任されない」ところで保つという仕組みになっています。 3.解釈変更について 「勤務延長制度」(国家公務員法第81条の3)という制度があります。 これは何かというと、本当は定年の年齢になったけど、ある仕事の途中であって、ここでやめると「公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるとき」には、「一年を超えない範囲」で任命権者が延長させることができます。 再度必要なら、あらためて延長できますが、それでも最長3年間までとなっています。 この制度は今回の法改正の前から、すでに国家公務員法で規定されているもので、実際に各省庁の局長級や次官級に、たまに適用されている条文です。 ここで、「解釈の変更」という話がでてきます。 ある国会での質疑において、議員が「国家公務員法の定年60歳や、勤務延長制度というのは検察に適用されるのか?」と政府をただしました。 これに対して政府は、「両方とも適用されない」と答弁しました。 というのは、戦前からの経緯があり、検察の定年は「60歳」ではなく「検察庁法」に定める「63歳」であったこと。 あとからできた「国家公務員法」には、定年制に加えて「勤務延長制度」を組み込んでいたが、検察官の定年は別の「検察庁法」が根拠だったので「勤務延長制度」の定めもなかったこと。 これらが、「両方とも適用されない」と答弁した理由ですが、もしかすると国家公務員よりも定年がすでに3年長かったので、定年後も仕事を続けられる「勤務延長制度」については、深く考えないで良かったのかもしれません。 しかし、状況がかわります。 「年金接続」という問題が出てきました。 公務員の共済年金と厚生年金が一元化され、公務員の年金の支給開始年齢も、会社員と同様に徐々に引き上げられています。 最終的には支給開始は「65歳」からとなりますが、その途上にある現在では、支給開始年齢は「64歳」です。 今回の法案が成立して施行され、検察官の定年も「65歳」となれば問題ありません。 しかし、現在の検察官の定年は「63歳」です。 つまり、 64歳までの一年間、仕事もなく年金もないという状況が発生することとなります。 しかも、一般の国家公務員では認められている「勤務延長制度」も「適用されない」こととなっています。 今回、定年を「65歳」に合わせるのであれば、「勤務延長制度」も他の国家公務員同様、適用させることにしたらよいではないか、法務省はそう考えました。 そこで、この「65歳」に定年延長する法案の提出を前提に、1月17日、法務省は内閣法制局や人事院と協議を始めます。 その結果、検察官にも「勤務延長制度」を認めるよう「解釈変更」がなされ、1月31日に閣議決定されました。 つまり、 解釈変更の発端は、あくまで「年金接続問題」にありました。 4.なぜクロでないと言えるか 検察官に「勤務延長制度」が適用されるとなったとき、その最初の事例が黒川氏でした。 定年の時期を考えると、タイミング的には仕方がなかったのかもしれませんが、これが彼のための制度ではないかとの疑惑をうむ結果となりました。 本来なら定年のはずが、法解釈をまげて定年を延長し、「政権に都合の良い」黒川氏を検事総長にすえる。 こうした推測をうむに至りました。 任命権者たる「内閣」が、黒川氏を検事総長に任命したいのかどうかは、私は知りません。 しかし説明した通り、 検事総長の任命は「内閣」でできますが、解任はできません。 よって、現職の検事総長である稲田氏がやめない限り、あるいは定年に達しない限りは、黒川氏が検事総長になることはありません。 現職の稲田氏が定年に達するのは、来年2021年8月13日です。 稲田氏が定年まで頑張ろうと決意されれば、黒川氏の「勤務延長」の閣議決定は、少なくともあと2回(最長1年のため)は必要です。 合理的に考えれば、これだけ注目されているなかで、同氏の定年を「公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由がある」として、2回も閣議決定することは、相当ハードルが高いと思います。 つまり、 黒川氏が検事総長の最有力候補であったとしても、なれるかどうかは現職の稲田氏の決意次第です。 よって、私は今回の法改正や解釈変更が、ある特別の意図をもってなされたとは、到底、思えません。 さらに言えば、あまり知られていないようですが、検事総長は制度上、現職の検事が要件とはなっていません。 つまり本気で政権が黒川氏を検事総長にしたければ、一度退官した黒川氏を再度、閣議決定で任命することは可能です。 また、 「コロナで大変な時を狙って、火事場泥棒だ」との声は、わたしは適当ではないと思います。 なぜなら、申し上げたとおり 定年延長の議論は2年前からであり、法案の閣議決定を行ったのは今年の1月31日。 そのころ、緊急事態宣言を含めて、日本がこのような状況になっているとは誰も想像できなかったでしょう。 もちろん、「こんな大変な時にコロナと関係がない法案審議をするのか?」というご意見も理解できます。 コロナから命と暮らしを守ることが、目下の最優先課題であることには間違いありません。 しかし、我々の生活で解決すべき課題は、コロナだけではありません。 この国会で審議をしなければ、保険料が上がってしまうものや、4月から適用させる税制もあれば、障がい者のためのバリアフリー、あるいは研究力ランキングのトップ10から陥落した日本の科学技術力強化など、他にも待ったなしの課題はたくさんあります。 国会で何を議論し、どの法案を優先して取り組むかは、与野党で審議をして決めていくものです。 国家公務員法改正による定年延長も、野党の皆様のご理解も得ながら、審議を進めていくことに越したことはありません。 5.今回の問題点 では今回の法改正について、まったく問題がなかったのかと言えば、そうとは思いません。 これまで説明をさせて頂いた通り、私自身は、今回の法改正そのものに問題があるとは思っていません。 しかし、 そうした疑義が呈される状況になっているということ自体、政府や政権与党である我々の責任であると思っています。 森友学園や加計学園、「桜を見る会」など、さまざまな疑惑が折り重なってきたのはなぜか。 私自身、そこに違法性や国家的犯罪まではあるとは思っていません。 しかし、 少なからず長期政権の「ゆるみ」「おごり」が招いたものだと思っています。 こうした状況を十分に踏まえたうえ、さまざまな意思決定には「李下に冠を正さず」との思いで、余計な誤解を生まないように慎重にも慎重を期すべきだと思います。 政権与党だからといって、あるいは公明党だからといって、政府に遠慮する思いなど全くありません。 立法府の一員として、政府の間違ったこと、ただすべきことはしっかりと物申していこうと思っています。

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いさ 進一

いさ 進一

卒業後、科学技術庁(当時)に入庁。 惑星探査機「はやぶさ」の予算折衝など、科学技術政策に携わる。 その後、在中国大使館に一等書記官として赴任。 科学技術の分野での、日中協力を推進。 帰国後、文部科学省課長補佐、同省副大臣秘書官等歴任。 党青年局次長、同国際局次長。 党青年局次長、同国際局次長。 東京大学工学部で航空宇宙工学専攻。 科学技術庁(当時)入庁後、政府派遣で米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で修士号取得。 在中国大使館一等書記官を経て文部科学省副大臣秘書官など歴任。 大阪府守口市在住。 宇宙開発や医療などイノベーション(刷新)の力で経済を再生し、「モノづくり大国・日本」の復活に尽力します。 その経験を生かし日本の外交・国際貢献をリードします。 子どもが笑い、年を重ねるごとに幸せを感じる「笑子幸齢化」社会の実現をめざします。 エンジン故障など多くの困難に直面する中、財務省を説得して予算を確保。 機能を回復した「はやぶさ」は小惑星の微粒子を初めて持ち帰り、隕石の起源が明らかに。 2007年に在中国大使館一等書記官として赴任し、地球温暖化対策の共同研究で日中間の合意を取り付けた。 中国国家が定める中国語検定の最上級も取得。 帰国後、新しい日中協力の在り方を提案した「『科学技術大国』中国の真実」(講談社現代新書)を発刊。 各界から注目されている。 子どもが笑い、人々が年を重ねるごとに幸せを感じる〝笑子幸齢化〟社会をめざす。 そのカギを握るのは青年の力。 年金、医療を支える青年が元気で夢を抱ける社会の構築に全力。

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[B! politics] 検察庁法改正案はクロかシロか

いさ 進一

検察庁法案改正が、ネット上やメディアで大きく取り上げられています。 「政権に忖度する検察官を、定年制度をゆがめてまで検事総長にしようとしている。 」「三権分立の破壊だ。 」 これに対し、私の方にも「公明党は、一体どう考えているのか」とのお問い合わせも頂いております。 党を代表する立場にありませんが、政権与党の一員として感じていることをまとめてみました。 私の正直な感想は、 事の本質はともかく、何か危ないことをしようとしているという「イメージ」だけがネットで拡散しているということ、 でもこうなった原因は私たち政権与党にも少なからずあるということです。 その理由について、枝葉末節はそぎ落として、できるだけシンプルに書きたいと思います。 1.法案で何をしようとしているか まず、そもそも今回の法案で何をしようとしているか。 それは、 国家公務員の「定年の延長」です。 民間でも、定年が65歳まで、あるいは70歳までと延長できるようになってきていますが、国家公務員は「60歳」が定年(省庁のトップである事務次官は62歳)です。 今回の法律で、民間並みにこの定年を伸ばし、国家公務員も「65歳定年」にしようというのが、今回の法律です。 しかし、検察官には「国家公務員法」ではなく、「検察庁法」という別の法律があります。 これは、戦前には検察が裁判所に付置されていたことに由来しており、戦後の昭和22年の「検察庁法」が制定されて、ようやく現在の形となりました。 この「検察庁法」によって、検察官の定年を「63歳」(検事総長は65歳)と定めています。 それからはるか後、昭和56年に、国家公務員の定年が定められるわけですが、その際に検察官の定年の根拠は「検察庁法」のままでした。 今回の法律では、検察官も他の国家公務員も定年を「65歳」としてあわせることになりますが、そのためには「国家公務員法」、「検察庁法」の両方を改正する必要があります。 この法改正の内容は、急に出てきた話ではありません。 2年近く前の平成30年8月、人事院の「意見の申出」で示された方針でした。 黒川氏の定年が話題にのぼる、はるか前からの議論でした。 2.三権分立 「時に総理をも逮捕できる検察を、自由に任命できるようにするのはけしからん!」「三権分立の破壊行為だ!」とのご意見があります。 わたしは、この意見には違和感があります。 なぜなら、 もともと検事総長の任命権は「内閣」にあるからです。 ましてや、「三権分立」と結びつけるのは、ちょっと無理のある議論だと思います。 あらためて申し上げるまでもなく、 検察は「行政機関」です。 司法でも立法でもなく、行政組織です。 よって、 検事長以上の任命を「内閣」が、それ以外の検察官を法務大臣が行うのは、もともと法律に定められたことです。 ちなみに、「三権分立」をしているはずの「司法」ですら、最高裁長官を指名するのは「内閣」で、最高裁判事も「内閣」が任命します。 なぜかといえば、「三権分立」の趣旨は、「司法」「行政」「立法」がお互いに関与して、チェック・アンド・バランスを効かせるところにあります。 あえて言えば、「司法」に対してすら「内閣」は人事に関与しています。 ましてや、 行政機関たる検察の人事に対して、「内閣」が人事を行うのに、大きな問題があるとは思えません。 なら、「検察官の公正性はどうやって確保しているんだ」、との疑問があるかもしれません。 というのは、検察官は一般の行政機関とは異なります。 それは 総理をも逮捕できるという唯一の公訴提起機関という点であって、その職務には公正さが求められます。 検察が準司法的性格を持つと言われる理由です。 だからこそ、一般の行政官にはない身分保障があります。 検察官の身分保障とは、本人の意思に反して「解任されない」ということです。 検察庁法第25条に「前三条の場合(定年や体調不良)を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない」とあります。 つまり、時の権力者を公訴した、あるいは公訴しようとしても、それを理由にクビにされることは決してありません。 検察の公正さとは、「任命」のところではなく、「解任されない」ところで保つという仕組みになっています。 3.解釈変更について 「勤務延長制度」(国家公務員法第81条の3)という制度があります。 これは何かというと、本当は定年の年齢になったけど、ある仕事の途中であって、ここでやめると「公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるとき」には、「一年を超えない範囲」で任命権者が延長させることができます。 再度必要なら、あらためて延長できますが、それでも最長3年間までとなっています。 この制度は今回の法改正の前から、すでに国家公務員法で規定されているもので、実際に各省庁の局長級や次官級に、たまに適用されている条文です。 ここで、「解釈の変更」という話がでてきます。 ある国会での質疑において、議員が「国家公務員法の定年60歳や、勤務延長制度というのは検察に適用されるのか?」と政府をただしました。 これに対して政府は、「両方とも適用されない」と答弁しました。 というのは、戦前からの経緯があり、検察の定年は「60歳」ではなく「検察庁法」に定める「63歳」であったこと。 あとからできた「国家公務員法」には、定年制に加えて「勤務延長制度」を組み込んでいたが、検察官の定年は別の「検察庁法」が根拠だったので「勤務延長制度」の定めもなかったこと。 これらが、「両方とも適用されない」と答弁した理由ですが、もしかすると国家公務員よりも定年がすでに3年長かったので、定年後も仕事を続けられる「勤務延長制度」については、深く考えないで良かったのかもしれません。 しかし、状況がかわります。 「年金接続」という問題が出てきました。 公務員の共済年金と厚生年金が一元化され、公務員の年金の支給開始年齢も、会社員と同様に徐々に引き上げられています。 最終的には支給開始は「65歳」からとなりますが、その途上にある現在では、支給開始年齢は「64歳」です。 今回の法案が成立して施行され、検察官の定年も「65歳」となれば問題ありません。 しかし、現在の検察官の定年は「63歳」です。 つまり、 64歳までの一年間、仕事もなく年金もないという状況が発生することとなります。 しかも、一般の国家公務員では認められている「勤務延長制度」も「適用されない」こととなっています。 今回、定年を「65歳」に合わせるのであれば、「勤務延長制度」も他の国家公務員同様、適用させることにしたらよいではないか、法務省はそう考えました。 そこで、この「65歳」に定年延長する法案の提出を前提に、1月17日、法務省は内閣法制局や人事院と協議を始めます。 その結果、検察官にも「勤務延長制度」を認めるよう「解釈変更」がなされ、1月31日に閣議決定されました。 つまり、 解釈変更の発端は、あくまで「年金接続問題」にありました。 4.なぜクロでないと言えるか 検察官に「勤務延長制度」が適用されるとなったとき、その最初の事例が黒川氏でした。 定年の時期を考えると、タイミング的には仕方がなかったのかもしれませんが、これが彼のための制度ではないかとの疑惑をうむ結果となりました。 本来なら定年のはずが、法解釈をまげて定年を延長し、「政権に都合の良い」黒川氏を検事総長にすえる。 こうした推測をうむに至りました。 任命権者たる「内閣」が、黒川氏を検事総長に任命したいのかどうかは、私は知りません。 しかし説明した通り、 検事総長の任命は「内閣」でできますが、解任はできません。 よって、現職の検事総長である稲田氏がやめない限り、あるいは定年に達しない限りは、黒川氏が検事総長になることはありません。 現職の稲田氏が定年に達するのは、来年2021年8月13日です。 稲田氏が定年まで頑張ろうと決意されれば、黒川氏の「勤務延長」の閣議決定は、少なくともあと2回(最長1年のため)は必要です。 合理的に考えれば、これだけ注目されているなかで、同氏の定年を「公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由がある」として、2回も閣議決定することは、相当ハードルが高いと思います。 つまり、 黒川氏が検事総長の最有力候補であったとしても、なれるかどうかは現職の稲田氏の決意次第です。 よって、私は今回の法改正や解釈変更が、ある特別の意図をもってなされたとは、到底、思えません。 さらに言えば、あまり知られていないようですが、検事総長は制度上、現職の検事が要件とはなっていません。 つまり本気で政権が黒川氏を検事総長にしたければ、一度退官した黒川氏を再度、閣議決定で任命することは可能です。 また、 「コロナで大変な時を狙って、火事場泥棒だ」との声は、わたしは適当ではないと思います。 なぜなら、申し上げたとおり 定年延長の議論は2年前からであり、法案の閣議決定を行ったのは今年の1月31日。 そのころ、緊急事態宣言を含めて、日本がこのような状況になっているとは誰も想像できなかったでしょう。 もちろん、「こんな大変な時にコロナと関係がない法案審議をするのか?」というご意見も理解できます。 コロナから命と暮らしを守ることが、目下の最優先課題であることには間違いありません。 しかし、我々の生活で解決すべき課題は、コロナだけではありません。 この国会で審議をしなければ、保険料が上がってしまうものや、4月から適用させる税制もあれば、障がい者のためのバリアフリー、あるいは研究力ランキングのトップ10から陥落した日本の科学技術力強化など、他にも待ったなしの課題はたくさんあります。 国会で何を議論し、どの法案を優先して取り組むかは、与野党で審議をして決めていくものです。 国家公務員法改正による定年延長も、野党の皆様のご理解も得ながら、審議を進めていくことに越したことはありません。 5.今回の問題点 では今回の法改正について、まったく問題がなかったのかと言えば、そうとは思いません。 これまで説明をさせて頂いた通り、私自身は、今回の法改正そのものに問題があるとは思っていません。 しかし、 そうした疑義が呈される状況になっているということ自体、政府や政権与党である我々の責任であると思っています。 森友学園や加計学園、「桜を見る会」など、さまざまな疑惑が折り重なってきたのはなぜか。 私自身、そこに違法性や国家的犯罪まではあるとは思っていません。 しかし、 少なからず長期政権の「ゆるみ」「おごり」が招いたものだと思っています。 こうした状況を十分に踏まえたうえ、さまざまな意思決定には「李下に冠を正さず」との思いで、余計な誤解を生まないように慎重にも慎重を期すべきだと思います。 政権与党だからといって、あるいは公明党だからといって、政府に遠慮する思いなど全くありません。 立法府の一員として、政府の間違ったこと、ただすべきことはしっかりと物申していこうと思っています。

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